矢張りというか、メイリン教師に勝つ事は出来なかった。的確に術者とひづるを狙い撃

ちにしてきたしな……。一応勝った連中もいるらしいが、彼等の多くはそれ相応の準備を

した者か、運が良かった者だろう。

「大丈夫か水無月?」

 不安気に俺を上から覗き込んでいるのは、ひづるだった。珍しく苗字で呼んでいる。

「ん……だいじょ………」

 大丈夫ぶだ。と答えようとして喉が詰まった。

「ガハッ!!」 

マイケルのような音を出しながら、俺は熱い塊を吐き出した。何となく予想していたが、

矢張り血だった。

「大丈夫じゃなさそうだな」

「……れに、いったい……なに…が?」

「覚えてないのか? 貴様5Fから転落したのだぞ?」

 ………記憶に無いな。どうやら俺は遠目に見えていた生徒達と同じく落ちたらしい。視

線を巡らせば俺の周りにガラス片が散っている。その上に落ちたら大怪我だったろう。

「……よく見れば貴様かなり出血してるようだぞ一面血の海じゃないか」

 どうやら俺はその上に落ちた上体を切ったらしい。自分じゃ痛くないから不思議だ。

「多分もうすぐ、形容したがい激痛がするか、何も感じなくなるかのどちらかだと思うぞ」

 冷静に解説せずにすぐにでも適切な治療とか処置とか、人を呼ぶとかして欲しいんだが

……。そう口にしたかったが声が出ない。

 しかし残念な事にひづるは治癒魔法を使えず、一応俺は初歩的なものなら使えるが、こ

うも怪我が酷いと呪文を唱えることすら出来ない。周りに治癒魔法やユニコーンを呼べる

奴等はいるかもしれないが、教師を相手にして多くの人間は大なり小なり怪我を負ってい

て仲間内を治すのに手一杯といったところだろう。

「水無月………」

 なんだよ。

「短い間だが楽しかったぞ」

 俺はもう死ぬ事確定か!?

「助かりそうに無いじゃないか」

 表情を変えず淡々と言うひづる。確かにこれだけの傷を負っている上、救いの手も期待

できそうに無い。気のせいかひづるの顔もぼやけてきて……あぁ畜生。日が落ちたのか視

界が暗くなってきた。

「おぃ、水無月。何とか言ったらどうだ? おぃ」

 ……なんでそんな必死そうなんだ?

「ひづるさん、どうしました?」

 聞き覚えのある大人びた男の声が聞こえてきた。

「………見ての通りだ。今生の別れになるかも知れんぞ?」

「……。確かにこの傷は放っておくとまずいですね。急ぎ治療をするとしましょう」

 ……救いの手が来た…のか?

「間に合うのか?」

「えぇ大丈夫です。私にお任せください」

 男の声は自信に満ちていた。すぐ傍でガサゴソと音がした後、懐かしい良い香りがして

くる。

「…………本当にそれで、それは冗談か何かか?」

「いえ、冗談ではありませんよ。さ、ひづるさんは下がってください」

「あ、あぁ……」

 釈然としていないひづるの声。一体何をしているのだろうか。

「では、はじめますよ」

そう言うと男は厳かに呪文を唱え始めた。呪文はごくごく短かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……体はで、魂は誇りで、そして血潮珈琲で出来ている!!

 

 叫び声と共に俺の体に熱い物が流れ込む。

 

 おぃ本城………。貴様俺に何をしている!?

 そこで俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

激終!!

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